日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成24年度日本調理科学会大会
セッションID: 2P-55
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ポスター発表
シルクタンパク質セリシンの食パンへの応用
*武智 多与理高村 仁知
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抄録

【目的】シルクタンパク質セリシンは、カイコ繭に20~30%含まれている。セリシンの大部分はこれまで未使用で廃棄されてきたが、近年、セリシンの機能性が明らかにされ、化粧品や医薬品分野での利用が提案されている。しかし、食品分野への応用研究は極めて限られている。私たちは、セリシンを日常的摂取形態の食品に応用したいと考え、これまでに調味料としてサラダドレッシングへの応用を提案している。本研究では、セリシンの保水(湿)性、タンパク質との親和性、レジスタントプロテイン効果に着目し、食パンへの応用を検討した。
【方法】セリシンを添加した食パンとセリシンを添加しない食パンを作成し、物性値(膨張性,水分率,硬さ)の測定および官能評価を行った。膨張性は、食パンの重量および体積(菜種置換法)を測定し比容積を算出するとともに高さを測定し、比容積および高さを膨張性の指標とした。水分率は、常法に従い測定した。硬さは、クリープメーター(山電製)で応力破断強度を測定し、これを食パンの老化度の指標とした。官能評価は、10人で構成したパネルにより、評点法で行った。
【結果】まず、膨張性およびパンの状態を指標に添加量の上限を検討したところ、粉比4%が上限であることが明らかとなった。セリシン添加食パンは膨張性が高くなり、大きなパンが作成できたが、水分率には差が見られなかった。硬さを測定したところ、作成当日からセリシン添加食パンの方が柔らかく、また、作成後2日目・3日目においても、柔らかさが持続していることが確認できた。以上の結果より、セリシンの添加により、でんぷんの老化を抑制し、柔らかさが保たれる食パンを作成できることが期待される。

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