細根は森林の炭素循環の重要な構成要素であるが、その動態を測定する各種の手法には、微環境の改変や測定値の信頼性、機材の価格等、それぞれに問題点がある。とくにアマゾン等の熱帯地域では細根の成長・枯死・分解のサイクルも早いと考えられるため、環境条件に応じた適切な測定方法の検討が不可欠である。本研究では、ブラジル・マナウス近郊の熱帯林において、砂質土壌が分布する斜面下部と、粘土質の土壌が分布する斜面上部で、フラットベッド・スキャナを用いて直径2 mm未満の細根の成長と枯死の動態を測定した。イングロースコアを用いた細根成長量の測定も併せて実施し、結果を比較した。また地形単位ごとに土壌含水率の変動も測定し、細根の動態との関係を検討した。スキャナによる測定では、とくに多雨期に斜面下部で活発な成長と枯死が観察されていたが、斜面上部では成長・枯死のサイクルは非常に緩慢であった。一方、イングロースコアによる測定では、斜面下部と上部で1年間の細根生長量にほとんど差がなかった。後者では埋設期間中の枯死分を測定できず、とくに斜面下部ではかなりの過小評価になっていた可能性が高い。