流域に暮らす多様な属性の人々が森林資源に対して抱く意識や価値観について、京大フィールド研『木文化プロジェクト』が行ったアンケートの結果を報告する。対象流域は、由良川流域(京都府)および仁淀川流域(高知県)である。プロジェクトでは両流域に於いて、各流域の上・中・下流の居住者を対象とした「流域の森林利用に関する意識調査」と、各流域の最上流部に位置する美山町および仁淀川町の山林所有者を対象とした「森とくらしに関するアンケート」を実施した。その結果、(1)国産材の有力な消費者となりうる流域住民は国産材に対して一定のプレミアムを感じておりその利用に対して前向きな姿勢であること、(2)山林所有者の多くが資金と労働力不足による山林の管理不足を十分認識しつつも本来は可能な限り山林を有効活用したいと考えていること、が明らかになった。このことは、国産材の消費と生産に関わる両サイドの意識が共にその利用拡大に向けられていることを示唆しており、今後の森づくりの一つの方向性を示している。本発表では、流域住民の森林資源に対する意識を整理すると共に、それらの意識に基づく今後の森林管理の在り方についても議論する。