日本森林学会大会発表データベース
第124回日本森林学会大会
セッションID: O05
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森林生態系の放射能汚染の実態解明に向けて
福島原発事故から1年半後の森林の放射性セシウムの分布状況
*金子 真司高橋 正通赤間 亮夫池田 重人佐野 哲也三浦  覚大貫 靖浩平井 敬三志知 幸治阪田 匡司橋本 昌司梶本 卓也田中  浩齊藤  哲高野  勉小野 賢二
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抄録

 東電福島第一原発事故で放出された放射性セシウム(Cs)の森林における汚染状況の変化を明らかにするために、2011年8-9月に調査をした福島県の3試験地(5林分)で2012年8~9月に再調査を行った。森林内の地上1mの空間線量率は昨年に比べて低下傾向にあったものの、Csの物理学的壊変から予想される放射能の減衰(前年比86%)に比べて低減率(前年比91-104%)は小さかった。また樹木の葉や枝のCs濃度は前年に比べて大幅に減少し、堆積有機物中のCsも全般に低下したのに対し、表層土壌(0-30cm)のCs濃度は増加した。その結果、森林内のCs分布は、樹木と堆積有機物のCs割合が低下し、表層土壌のCs割合がいずれの林分でも約70%と高まった。森林のCs蓄積量は、川内試験地および大玉試験地のスギ林では前年比87%と低下したが、それ以外の林分ではCs蓄積量は昨年とほとんど変わらなかった。以上、この1年間に森林内のCsは樹木や堆積有機物から表層土壌へ移動し森林内のCs分布は変化したが、Cs蓄積量に大きな変化がないことから森林に沈着したCsのほとんどは森林に留まっていることが明らかになった。

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© 2013 日本森林学会
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