東電福島第一原発事故で放出された放射性セシウム(Cs)の森林における汚染状況の変化を明らかにするために、2011年8-9月に調査をした福島県の3試験地(5林分)で2012年8~9月に再調査を行った。森林内の地上1mの空間線量率は昨年に比べて低下傾向にあったものの、Csの物理学的壊変から予想される放射能の減衰(前年比86%)に比べて低減率(前年比91-104%)は小さかった。また樹木の葉や枝のCs濃度は前年に比べて大幅に減少し、堆積有機物中のCsも全般に低下したのに対し、表層土壌(0-30cm)のCs濃度は増加した。その結果、森林内のCs分布は、樹木と堆積有機物のCs割合が低下し、表層土壌のCs割合がいずれの林分でも約70%と高まった。森林のCs蓄積量は、川内試験地および大玉試験地のスギ林では前年比87%と低下したが、それ以外の林分ではCs蓄積量は昨年とほとんど変わらなかった。以上、この1年間に森林内のCsは樹木や堆積有機物から表層土壌へ移動し森林内のCs分布は変化したが、Cs蓄積量に大きな変化がないことから森林に沈着したCsのほとんどは森林に留まっていることが明らかになった。