植物群落の光環境を推定するモデルは、門司・佐伯モデルをはじめとして数多く開発・改良がなされてきている。これらのモデルの多くは、均一な構造の植物群落を想定している。しかしながら実際の植物群落、とりわけ森林の樹冠構造は不均一であることが多い。さらに近年では、列状間伐などにより不均一性の増した林冠構造をもつ林分が数多く存在する。 そこで本研究では、不均一な樹冠構造を表現し、さらに樹冠内の異なる位置における光環境を推定するための簡便なコンピュータ・モデルを構築することを目的とした。そのために、まず樹冠を適当なサイズの葉群球(葉群クラスタ)の集合体とみなし、葉群クラスタを基本単位とした樹冠構造をもつ個体を仮想的に構築することを試みた。そのうえで、複数の仮想個体からなる林分において、任意の葉群クラスタにおける光環境を推定するモデルをR言語を用いて構築した。 その結果、構築したモデルにより、1. 均一な樹冠環境における光条件の垂直分布、2. 不均一な樹冠環境における光条件の垂直分布のバリエーションを表現できることが判った。