日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-26
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臨床・応用技術
中空糸ガラス化法の実用化に関する研究-1:融解速度の胚生存性への影響
*内倉 鮎子松成 ひとみ松村 幸奈中野 和明浅野 吉則前原 美樹若山 清香若山 照彦長嶋 比呂志
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抄録

【目的】我々は既にマウスおよびブタ胚のガラス化保存において,中空糸法により高い生存性が得られることを報告した。本研究は,中空糸法の融解条件が胚生存性に及ぼす影響を検証することを目的とした。 【方法】過排卵処理したBDF1マウスから採取した2細胞期胚を実験に用いた。既報(Matsunariら,2012)に従い,7.5% DMSO,7.5% エチレングリコール(EG)を含む平衡液中で,セルローストリアセテート製中空糸内に10個の胚を収容した。5–7分の平衡後,中空糸を15%DMSO,15%EG,0.5M sucroseを含むガラス化液に1分間維持し,その後液体窒素(LN)中に投入した。3種の融解条件を比較した。通常法:LNから取り出した中空糸を37.5℃に温めた融解液(1M sucrose含)に素早く投入した。加温盤法:中空糸を37.5℃に温めた加温盤上に約3秒静置して融解し,その後室温の融解液に投入した。空気中法:中空糸を室温の空気中に5秒間保持して融解し,その後室温の融解液に投入した。融解液投入以降の凍害保護剤の段階的希釈および洗浄は常温で行った。胚の生存判定は培養および移植試験により行った。 【結果】通常法,加温盤法,空気中法および非ガラス化区の胚盤胞形成率には,有意差は見られなかった(105/110, 95.5% vs. 107/110, 97.3% vs. 94/100, 94.0% vs. 109/110, 99.1%)。各区のガラス化胚を発情同期化したレシピエント雌に移植した結果,妊娠率はいずれも100% (4/4;非ガラス化区のみ2/2)であり,移植胚の胎仔への発達率は,55/80(68.8%),56/80(70.0%),55/80(68.8%),35/40(87.5%)であった(有意差なし)。 【考察】一般にガラス化法においては,超急速な融解条件が必須と考えられている。中空糸ガラス化法では,比較的緩除な条件で融解が行われた場合にも,胚の生存性が高く保たれることが明らかとなった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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