日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-75
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卵・受精
卵母細胞の減数分裂制御機構におけるC型ナトリウム利尿ペプチドの役割
*辻 岳人清須 千代秋山 耕陽国枝 哲夫
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抄録

【目的】卵巣内の卵母細胞は減数分裂第一分裂前期の状態を維持し,LHサージにより再開する。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は,受容体(NPR2)により合成されたcGMPを介して減数分裂の停止維持に関わることが後期胞状卵胞でのみ報告されている。本研究では,CNPシグナルによる減数分裂抑制効果がより早期卵胞で機能しているか調べ,さらに,LHによる減数分裂再開への関与についても解析をおこなった。 【方法】 1.Npr2遺伝子に機能欠失型の突然変異をもつマウスについて,25日齢の卵巣切片を作成し,卵母細胞における核の状態を観察した。2.25日齢の正常マウスとPMSG,hCGを投与した正常マウス卵巣におけるCNP (Nppc) 遺伝子および受容体(Npr2)遺伝子の発現パターンを解析した。3.正常マウス卵巣より単離した顆粒膜細胞を培養し,アンフィレギュリンおよびEGFレプター阻害剤によるNppc遺伝子の発現量への影響を解析した。【結果】 Npr2遺伝子に変異をもつマウスの卵巣では,前胞状卵胞までの卵母細胞は正常マウスと同様にGV期であったが,初期胞状卵胞以降の半数以上の卵母細胞では染色体が観察され,減数分裂が異常に再開していた。初期胞状卵胞では卵胞外側および卵母細胞周囲の顆粒膜細胞にNppcおよびNpr2遺伝子はそれぞれ発現し,PMSG投与48時間後の胞状卵胞では,顆粒膜細胞と卵丘細胞において発現していた。また,Nppc遺伝子の発現はhCG投与後に顕著に減少した。培養顆粒膜細胞では,Nppc遺伝子の発現量はアンフィレギュリン添加により減少し,EGFレセプター阻害剤の前処理により発現量の低下は認められなかった。以上の結果より,CNP/NPR2シグナルは,胞状卵胞期以降の卵母細胞の減数分裂の停止維持に関わる体細胞由来の必須因子であることが示された。また,LHサージによる減数分裂再開には,CNPによる減数分裂停止維持効果の低下が関与している可能性が示された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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