主催: 水文・水資源学会
補完法の一つであるAAモデルは現行の気象観測データから実蒸発散量を推定でき,日本での有効性も確認されている。中道らは日本の複数の地点においてAAモデルとPenman式を適用し,AAモデルが特に都市部の水域や緑地帯からの蒸発散量を過小に推定することを明らかにした。都市部の水域では,Penman式の推定値Epenに比べ, AAモデルの推定値EMAAは平均して380mm/yearほど小さくなる。これに対し,AAモデルの推定値に補正係数kを乗じて改善することを考え,kをアルベドαの一次式,k=aα+bとして提案した。係数a,bは気温と飽差の関数として,市街地ではk=1,水域ではk=Epen/EMAAとなるように同定した。AAモデルにこの補正係数kを用いることにより,市街地ではそのままに,水域や緑地帯ではPenman式と同程度に蒸発散量を推定でき,都市部の実蒸発散量をより適切に評価できるようになった。