水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2012年度研究発表会
セッションID: 32
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特別セッション【タイ洪水】(9月28日10:25~11:40)
2011年タイ国洪水における市民の水害対応と水害認識
*中村 晋一郎西島 亜佐子小森 大輔木口 雅司梯 滋郎マテオ チェリー岡根谷 実里沖 大幹
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抄録

2011年5月から10月にかけての降雨の影響により,タイ国Chao Phrayaチャオプラヤ川において大規模な洪水が発生した.これにより死者・行方不明者816名,被害および損失額は約1.兆425兆3600億バーツBaht(約3.75兆円)と甚大な被害が発生した1).今回の洪水では,多くの市民が自宅や職場の浸水によって被災した.市民がいかなる水害対応を行ったのか,また今回の水害をどのように認識しているのかを明らかにすることは,今後の防災計画,治水計画を考える上で必須である.筆者らは,2011年11月4日から同9日にかけて現地調査を実施し,市民の水害対応及び水害認識に関するヒアリングを行った.   調査は,被害が甚大であったChao Phraya川中流部に位置するChainatから下流部Bangkokのエリアを対象とし, 142名から回答を得た.   被験者のうちほぼ半数が自宅の浸水被害を受けており.その浸水深は「1m未満」が35%を占め,1階部分の天井高に当たる3m未満は全体の82%と.殆どの家屋が2階部分の浸水を免れている.「避難した」と回答したのは42%と半数にも満たない理由は,2階部分の浸水を免れた点が大きいと考えられる.   市民の水害対応としては「土嚢積み」が最も多く,次いで「家具のリフトアップ」を行ったという回答が多かった.リフトアップは 2階部分に浸水が及ばなかったため,有効な水害対応であったと言える.   既往洪水のうち被験者の半数以上が1995年洪水を記憶していたが.それ以外については,10名以下の回答数で,発生年もばらばらであり,既往洪水への認識に大きなばらつきがあることが分かった.   「今回の水害の一番の原因は何と考えるか?」という質問に対して,最も多かった回答は「森林伐採」であり,続いて「ダム操作の失敗」,「流域管理の失敗」と人為的な原因を挙げる回答が多かったが,台風,大量の降雨,それによる洪水流など,自然的要因とする回答もほぼ同数程度存在することが分かった.

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