日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-166
会議情報

ポスター
異なるフタル酸エステル類の90日間併用混餌投与によるラットの肝臓と雄性生殖器への影響の相互作用
*鈴木 和彦谷合 枝里子小野 敦石井 雄二盛田 怜子八舟 宏典三森 国敏渋谷 淳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景】フタル酸エステル類はアルキル基の違いによって活性化するPPAR亜型とその親和性や毒性標的は異なる。我々は昨年度の本学会にて、フタル酸ジへプチル(DHP)はラットへの90日間混餌投与により高用量域でのみPPARα非依存的にGST-P陽性肝前がん病変を形成することを明らかにした。本研究では作用機序や作用強度の異なるフタル酸エステルの併用投与による肝臓及び雄性生殖器に与える影響を検討するために、6週齢の雄性F344ラットにフタル酸ビス(2-エチルヘキシル) (DEHP; 12,000 ppm)、フタル酸ジブチル (DBP; 12,000 ppm)、DHP (10,000 ppm)を単独あるいはDEHPとDBP、DEHPとDHPの組み合わせで90日間混餌投与を行なった。【結果】肝臓ではDEHP単独群でみられた好酸性肝細胞肥大がDBPとの併用で増強し、DHP単独群でみられた肝細胞の腫大・空胞変性はDEHPとの併用で消失した。α2-macroglobulinの免疫染色では、DHP単独群のみでGST-P同様に陽性巣を形成したが、これらはいずれもDEHPとの併用で消失した。また、DHP単独群のみでPCNA陽性細胞率が増加した。精巣では各単独群では有意な変化を示さず、両併用投与群で精細胞の脱落を主としたびまん性の精細管萎縮を示した。肝臓におけるreal-time RT-PCRではAcox, Ehhadh及びCyp4a1などPPARα依存性の因子の発現増加はDEHP及びDBP単独群でみられ、これらの併用で増強した。また、活性酸素種産生酵素Nox2はDHP単独群で発現増加したが、DEHPとの併用で抑制され、DHP単独群でみられたSod1, Sod2及びCatなどの酸化還元酵素の発現減少はDEHPとの併用で回復した。さらに、DNA酸化傷害指標の8-OHdGが全投与群で対照群より増加したが、併用による相加作用はみられなかった。【考察】肝臓ではDEHPによるPPARα活性に対するDBPの増強作用と、DHPによる酸化ストレス誘発及び肝細胞の増殖作用に対するDEHPの拮抗作用が推察され、精細管萎縮については併用による相加または増強作用が推定された。

著者関連情報
© 2012 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top