日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-230
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トキシコゲノミクスによる肝臓の小胞体ストレス評価マーカの探索
*森川 裕二上原 健城中津 則之小野 敦山田 弘大野 泰雄漆谷 徹郎
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抄録

【背景・目的】小胞体はタンパク質の合成・折り畳みを司る重要な細胞小器官である.小胞体において変性タンパク質が過剰に蓄積するストレス状態が続くと,正常な機能が妨げられ,最終的には細胞死が誘導される.肝臓では多数のシトクロムP450が小胞体に局在し薬物代謝を行っていることから,小胞体ストレスを評価するマーカーは肝障害の機序解明に有用であると考えられる.本研究ではトキシコゲノミクスプロジェクトにおいて構築されたデータベース(TG-GATEs)を用いて,ヒトおよびラット肝細胞で肝臓の小胞体ストレスを予測・評価するマーカーの探索を行い,その有用性を検討した.【手法】Affymetrix社製のGeneChipを用いてヒトおよびラット肝細胞の網羅的遺伝子発現データを取得し発現差異解析を行った.正例は「小胞体ストレスを誘発することが知られているNSAIDs 4化合物」,負例は「ラットin vivoにて小胞体ストレス応答遺伝子の変動が見られない8化合物」と設定し,いずれも24時間曝露のデータを使用した.既知の小胞体ストレス応答遺伝子群から(i) 正負例間での倍率変化が1.5倍より大きい,もしくは2/3倍より小さい(ii) Mann-WhitneyのU-testにてP値<0.01という2つの条件を設定しマーカー候補となる遺伝子を絞り込んだ.そして,SVMにより予測モデルを構築し,5-fold Cross ValidationおよびTG-GATEs収載の他の化合物への予測を実行し妥当性の検証を行った.【結果】発現差異解析の結果,ATF4, SERP1の2遺伝子がマーカー候補として絞り込まれた.この2遺伝子を用いた5-fold Cross Validationの検証結果は良好であり,小胞体ストレス性化合物であるCyclosporine Aを陽性と判定するなど他の化合物への予測結果も妥当なものであった.【結論】本研究を通じて,ヒトおよびラット肝細胞で肝臓の小胞体ストレスを予測・評価するマーカーとして,ATF4, SERP1の2遺伝子が有用であることを見出した.

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© 2012 日本毒性学会
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