日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-233
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ヒト肝細胞トランスクリプトームデータベースを用いたペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)αアゴニストの検出とその検証
*水川 裕美子森川 裕二中津 則之小野 敦山田 弘大野 泰雄漆谷 徹郎
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抄録

我々は大量の網羅的遺伝子発現データを含む大規模データベースシステム“TG-GATEs”を構築し,それを用いて各種毒性を検出するバイオマーカーの抽出を行ってきた.TG-GATEs には150以上の化合物をin vivo投与したラットの肝および腎,in vitroで曝露したラットとヒトの初代培養肝細胞の遺伝子発現データが含まれる.以前我々はラット肝臓および初代培養肝細胞で利用できるPPARαアゴニストマーカーについて報告しており(J. Toxicol. Sci., 31, 471-490, 2006),その改良および検証について第85回日本薬理学会年会で報告したが,さらに今回ヒト初代培養肝細胞に適用できる判別モデルの構築および検証を行った.PPARα活性化薬物で共通に変動した遺伝子を抽出し,サポートベクターマシン(SVM)を用いて判別モデルを構築した.TG-GATEsのデータでは,典型的なPPARα活性化薬であるフィブラート系薬物の他,ベンジオダロンや多くのNSAIDsなどが陽性と判別された.この結果はラット初代培養肝細胞の場合と一致していた.またPPARαとコアクチベーターとの結合アッセイを用いてアゴニスト活性を確認した.外部の公共データベース上のデータについても判別を行ったところ,陽性化合物のWY-14643と陰性化合物のリファンピシンはそれぞれ正しく判別された.判別モデルに用いた遺伝子は脂質代謝に関連しPPARとの関連が知られているものが多かったが,ラットの判別モデルに用いた遺伝子と共通のものはなかった.発現変動のみられた遺伝子は全体としてラットより大幅に少なかったが,それらはラットでも変動がみられた.今回,PPARαアゴニスト検出に役立つ,信頼性・頑健性の高い判別モデルが構築できた.今後ラットモデルとの比較などさらに解析を進め,種差の原因解明などにもつなげたい.

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© 2012 日本毒性学会
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