日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-237
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ラット肝2段階発がんモデルを用いた肝発がんの分子毒性学的研究 -4. レクチンアレイを用いた肝臓の糖鎖プロファイル解析
*南 圭一上原 健城林 仁美三森 国敏大村 功神吉 将之小野 敦山田 弘大野 泰雄漆谷 徹郎
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抄録

【背景および目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)において構築された遺伝子/毒性データベースであるTG-GATEsを用いて,ラット肝臓のマイクロアレイデータに基づく遺伝毒性肝発がん物質の判別モデルを構築した.その有用性検証の一環として,我々は2段階肝発がんモデルラットを作製し,種々の検討を実施した.本検討では,2段階肝発がんモデルラットの肝及び血漿における糖鎖プロファイルの変動について,レクチンアレイを用いて解析を行った.
【方法】ラット(Crl:CD (SD)IGS;6週齢)にDiethyl nitrosamine(DEN),Thioacetamide(TAA),Methapyrilene,Ethionamide及びAcetaminophenを2週間反復投与し,2週間休薬後にPhenobarbital(PB)飲水投与を開始した.PB投与1週間の時点で肝部分切除を行い,6週間後に解剖を行った.解剖時における糖鎖プロファイルの変化についてレクチンアレイを用いて解析し,前がん病変の発現との相関について検討した.
【結果】肝においては,前がん病変が最も顕著に認められたDEN高用量群において,最多である18種類のレクチンに反応増加が認められ,DEN低用量群でも一部共通した変化が認められた.弱い前がん病変の認められていたTAA投与群においては,高用量よりも低用量の方で多くのレクチンで反応増加が認められていたが,その原因は不明であった.変動していたレクチンより糖鎖構造の変化について推定したところ,特徴的な糖の脱離,付加やO型糖鎖の増加,糖鎖構造の絶対数増加を示唆するような変化が捉えられ,一般的にがん細胞に認められる糖鎖の変化と一致していた.これらのことから,前がん病変段階でも既に糖鎖構造はがん細胞に特徴的な形態に遷移し始めていることが示唆された.血漿においては,DEN高用量では5種類のレクチンに反応減少が認められており,この変化をもとにバイオマーカーの可能性について検討している.

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© 2012 日本毒性学会
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