日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-238
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ラット肝2段階発がんモデルを用いた肝発がんの分子毒性学的研究 -1. トキシコゲノミクス及び病理組織学的アプローチによる肝発がん物質のイニシエーション活性の検索
*上原 健城森川 裕二林 仁美三森 国敏神吉 将之大村 功南 圭一中津 則之小野 敦山田 弘大野 泰雄漆谷 徹郎
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抄録

医薬品や化学物質の発がんリスクは,長期がん原性試験において判定されるが,その代替法として,簡便かつ短期の発がん性リスク評価系の確立が望まれる.我々は,トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトの産官学共同研究を通じて,化合物の遺伝毒性,非遺伝毒性肝発がん作用を最長28日間のラット反復投与試験で高精度に予測するトキシコゲノミクス判別モデルを構築した.今回,5種の化学物質 [肝発がん物質:nitrosodiethylamine (DEN),thioacetamide (TAA),methapyrilene,非発がん物質:acetaminophen,ethionamide] の肝イニシエーション作用の有無を,phenobarbitalをプロモーターとしたラット肝二段階発がん試験法を用いて検討した.イニシエーション活性の有無は,肝臓の病理組織学的検査,GST-P免疫組織化学染色による陽性細胞巣の計測により判定した.その結果,既知の遺伝毒性肝発がん物質であるDENに加え,文献的に非遺伝毒性肝発がん物質として報告されているTAAにイニシエーション作用が認められた.本試験成績は,トキシコゲノミクス判別モデルにより得られた予測結果と一致し,我々の構築した判別モデルの予測結果の妥当性の裏づけとなるものである.さらに我々は,クロスオミックスアプローチによる発がんメカニズムの解明や新規バイオマーカー探索を目的として,二段階発がんモデルにおいて採取したラットの肝臓及び血漿におけるマイクロRNA発現解析,次世代シーケンサーを用いた肝臓の網羅的DNAメチレーション解析,レクチンアレイを用いた肝臓の糖鎖プロファイル解析を実施した.本発表では,トキシコゲノミクス及び病理組織学的アプローチによる肝発がん物質のイニシエーション活性の検索を中心に,一連の研究成果を総括する.

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© 2012 日本毒性学会
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