日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-240
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ラット肝2段階発がんモデルを用いた肝発がんの分子毒性学的研究 -3. 次世代シーケンサーを用いた肝臓における網羅的DNAメチレーション解析
*大村 功上原 健城林 仁美三森 国敏神吉 将之南 圭一中津 則之小野 敦山田 弘大野 泰雄漆谷 徹郎
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抄録

【背景・目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)において,ラット肝臓の網羅的遺伝子発現データに基づく遺伝毒性肝発がん物質の判別モデルを構築した。その有用性検証の一環として,我々は2段階肝発がんモデルラットを作製し,種々の検討を実施している。本検討では発がんに至る初期の段階で生じるエピジェネティックな変化を捉える目的で,二段階肝発がんモデルラットの肝において次世代シーケンサーを用いた網羅的DNAメチレーション解析を行い,前がん病変形成過程においてメチル化状態が変動する領域を探索した。【方法】ラット(Crl:CD (SD)IGS;6週齢)にDiethyl nitrosamine(DEN),Thioacetamide(TAA),Methapyrilene(MP),Acetaminophen(APAP)をそれぞれ2週間反復投与し,2週間休薬後にPhenobarbital(PB)飲水投与を開始した。PB投与1週間の時点で肝部分切除を行い,6週間後に解剖を行った。肝切除時および解剖時に採材した肝臓サンプルについてゲノムDNAを採取し,超音波による断片化後,MBD2タンパクによるメチル化DNAの分画を行った。このメチル化DNAについて,Life technologies社のSOLiD4を使用してシーケンス及びマッピング解析を行った。【結果】単一のCpG,CpGアイランド,エクソン,イントロン,及びプロモーター領域のメチル化状態の変化を調べた結果,各化合物を処置したラットの剖検時の肝において,メチル化状態に変化が認められる領域が多数見つかった。肝切除時のDNAにおいても変動領域が認められたことから,DNAメチル化は変動の大きさに違いはあるものの,週齢や化合物処置により変動しうるものであることが示唆された。また二段階発がん試験において陽性と判定されたDEN投与ラット肝DNAで特異的な変動領域が存在し,これらの領域と発がんに何らかの関連がある可能性が考えられた。今後は本解析によって見出された変化と発がんメカニズムの関連について,より詳細な検討を実施していく予定である。

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© 2012 日本毒性学会
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