日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-7
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ペプチドを用いた細胞集合体の誘導と機能解析
*平野 義明田中 愛田畑 泰彦
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抄録

一般的に細胞培養(単層培養)は,生体内では要因が複雑で解析不可能な現象を解析可能にする手段として発達してきた.本来,細胞は特有の三次元的組織構造の中にあるため,細胞を生体から取り出して単層培養系に移すと,その機能がどの程度失われたのかを知ることは困難である.細胞培養技術においてこのような単層培養系の問題点を部分的に克服し,同時に動物実験に比較して簡便性,操作性を保つ三次元培養法が着目されている.ハンギングドロップ法,旋回培養法などの培養によって形成される細胞集合体の大きさや形は,細胞の種類や培養条件によって異なる.われわれは,Poly(Lys-Pro)n含有の培地を細胞上に添加することで細胞集合体を形成する新しい化学的手法を発見した.本研究では,細胞集合体の形成条件・機能について詳細に検討した結果を報告する.
 目的のペプチドである(Lys-Pro)n(n=10, 12, 14, 16)の合成は,Fmoc固相法で合成した.次に合成したペプチド(Lys-Pro)n(n=10, 12, 14)とマウス線維芽細胞株(L929)およびヒト肝ガン由来細胞株(HepG2)などとの相互作用の観察を行い,細胞播種数,細胞接着時間,ペプチドの残基数依存性について検討した.
 合成したペプチドを培地中に添加した結果,L929とHepG2ともに均一な細胞集合体を形成することが明らかになった.その際に,ペプチドの残基数依存性を検討したところ,n=10, 12では細胞集合体を確認することができたが,残基数が多い程(n=14以上)細胞毒性がみられた.また,細胞集合体作成には,播種密度,接着時間が重要な因子であることが明らかになった.さらには,細胞集合体形成には,塩基性アミノ酸であるLysの残基数が大きく影響していると考えられる.

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© 2012 日本毒性学会
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