日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-1
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日本における農薬等の急性曝露評価の必要性
急性参照用量(Acute reference dose)と急性曝露評価の必要性
*小野 敦
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抄録

我が国における農薬のヒト健康影響評価は、慢性曝露を対象としており、ヒトが一生涯にわたり毎日摂取しても健康に影響しない基準値として一日許容摂取量(Acceptable Daily Intake: ADI)が設定されている。近年、海外では農薬などを短期間に大量摂取したために中毒となる症例が発生した事例等を発端として、慢性曝露のみでなく急性曝露影響を評価し、その指標として急性参照用量(Acute Reference Dose: ARfD)を設定する取り組みが始められている。WHO/FAO合同農薬残留専門家会議(JMPR)では、1999年より急性曝露評価を開始するとともに、2002年には、ARfDを、「24時間以内に摂取してもヒト健康に影響を及ぼさない量」と定義している。我が国においては、過去に農薬混入等の中毒事例に関連した参考値としてARfDが設定された例を除いて急性曝露影響の評価は実施されていないが、ヒトが農薬等を事故的に短期間曝露した場合に起こりうる健康影響について評価を行い、ARfDを整備することは、食の安全のために重要である。しかしながら、実際のARfD設定においては、従来の安全性試験における急性毒性試験は致死のみをエンドポイントとしている、一方、その他の各種毒性試験は慢性影響の評価を目的としているため急性期影響の評価指標は限られており、さらに発現した毒性が急性影響であるという科学的根拠を示すための専門的知識が要求されることから不確定な要素が残されており、海外においても考え方がまだ十分に確立されていない。そこで我々は、公開されている農薬評価書等をもとに約200農薬についてARfDの設定を試みた。本講演では、急性曝露影響の必要性とともに我々の検討結果をもとに既存情報からのARfD設定の可能性と課題について概説する。

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© 2012 日本毒性学会
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