電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
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特別寄稿
回路理論の講義体系に関する思索と実践
—論理的に厳密に,また実験も—
大石 進一
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2014 年 7 巻 4 号 p. 301-307

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抄録

早稲田大学基幹理工学部に応用数理学科を設立して7年経過した.これは工学と数学を半分づつ学ぶ学科である.3年生に回路理論を工学系の中心的な必修科目として設置した.電気回路基礎から電子回路(アナログ電子回路もディジタル電子回路も含む)までを30回の90分講義で教える科目である.この科目を2012年度と2013年度の2年間担当した.講義の準備に当たって,回路理論を数学的な論理性を保って講義することができるかを考えた.講義開始前の数か月と講義開始後の8か月ぐらいの約1年間でこのことに対する思索(とそれに必要な歴史的な文献調査,外国の教科書の調査,現在の技術動向調査が含まれる)を巡らし,その結果をコロナ社から回路理論として出版した.結果的にこの本はマクスウェルの方程式を公理として仮定し,素子特性は数理モデルとして与えられていると考えて回路理論を数学的な論理性を保つように展開することを志した.教科書とするために,数学的道具立ては制限した部分が多く,また,原稿も半分程度に圧縮したが,回路理論の論理的展開のためにいろいろな講義展開法についての試行を行い,我が国の定石の講義法とかなり異なっている部分も多い.2年目には講義の前半は理論,後半は実験という形で講義を展開した.2年目は回路理論を論理的に捉えるだけでなく,実験により回路の実在をどう捉えるか考えさせた.これらの思索と実践について報告する.

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© 2014 一般社団法人 電子情報通信学会
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