理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 5
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理学療法基礎系
国際生活機能分類に基づく疾患非特異的な評価指標の検証
*内山 靖臼田 滋吉田 剛橋立 博幸桒原 慶太樋口 大輔浅川 育世松田 梢小澤 佑介篠原 智行長谷川 信
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抄録

【目的】国際生活機能分類の理念に基づき,障害の構造を広くとらえることによって理学療法全体の目的と効果を明確にすることが可能となる。本研究では,様々な疾患や病態に適用となる実用的な評価指標を確立するための基礎資料を得ることを目的とし,あわせて機能障害の指標であるバランスと全身持久性が疾患非特異的な評価指標として有用であるかを検証した。【方法】対象は,協力の得られた9施設で理学療法が施行され文書による説明によって同意が得られた者とした。検査項目は,信頼性と妥当性が報告されている指標のうち,疾患や病態に強く依存しないと思われる指標を選択し,一部は筆者らが修正・作成した。参加・活動として,人間関係,Life Space Assessment(LSA),Instrumental ADL,Functional Independence Measure(FIM),機能障害としてFunctional Movement Scale(FMS),筋力・可動域・感覚を含んだImpairments Scale(IS),臨床的バランス試験(CBT),全身持久性尺度(GES),全身状態,環境因子としてソーシャルサポート(SS),住環境,個人因子としてアパシー尺度(AP),コーピング尺度(CS),SF-8を用いた。計測・調査結果とともに所要時間を記録し,基本統計,指標間の相関(Spearman)分析を行った。【結果および考察】有効なデータが得られたのは168人(男性77,女性91)で,平均年齢は65.5±17.0(18~96)歳であった。虚弱高齢者11人,骨・関節系疾患57人,神経系疾患85人,内部障害15人が含まれていた。検査の所要時間は,参加5.7分,活動(実行状況と能力)7.2分,機能障害20.4分,環境因子5.7分,個人因子11.8分の合計50.8分で,機能障害が全評価の40.2%を占めていた。機能障害の指標のうち,CBTとGESはいずれも短時間での判定が可能で,5段階の尺度に比較的均等に分布していた。CBTは,SSを除く全ての項目と有意な相関があり,FMS:0.69,FIM(実行状況):0.53,IADL:0.53の係数であった。また,虚弱高齢者ではLSAとFIM,骨・関節系疾患ではAP,内部障害ではIADL・AP・FMSでより高い係数を示した。GESは,SS,CSを除く項目と有意な相関があり,FMS:0.65,FIM(実行状況):0.63,IADL:0.53の係数であった。また,虚弱高齢者では天井効果が大きく,骨・関節系疾患ではいずれの項目とも係数が低く,内部障害ではIADL,LSA,SF-8で高い係数を示した。【結論】疾患非特定的な包括評価を行うことで障害構造の全体と疾患特異的な側面とを明確にすることが可能で,バランスと全身持久性は疾患を問わず有用な評価指標であった。

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© 2007 日本理学療法士協会
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