理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 559
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理学療法基礎系
活動水準評価としてのLife-Space Assessmentの臨床的有用性
*臼田 滋内山 靖吉田 剛橋立 博幸桒原 慶太樋口 大輔浅川 育世松田 梢小澤 佑介篠原 智行長谷川 信
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抄録

【目的】移動能力の評価は理学療法の基本的な評価であり、従来は歩行などの自立度や持久性、速度、歩行補助具の有無などで評価されているが、活動水準の評価としては、生活範囲としての移動を評価することが重要である。本研究の目的は、生活空間レベルとしての移動を評価するLife-Space Assessment(LSA)と対象者の基本属性や日常生活活動(ADL)などとの関連性を分析することで、その理学療法における有用性を検討することである。
【方法】本研究は9施設による多施設間共同研究で実施された。対象は理学療法を施行している168名であり、疾患については、虚弱高齢者11名、神経系疾患85名、骨・関節系疾患57名、内部障害15名を含み、平均年齢は65.5±17.0歳、男性77名、女性91名であった。LSAは、過去4週間における生活空間(寝室以外の部屋から居住市町村より遠くまでのレベル1-5)とその頻度、自立度からスコアを算出し、その合計点は0-120に分布する。得点が高い程、移動が優れている。なお、入院中の対象者においては、生活空間レベルの内容に修正を加えて使用した。その他の評価指標には、Instrumental ADL(IADL)、Functional Independence Measure(FIM)、基本動作能力の評価指標としてFunctional Movement Scale(FMS)、機能障害の評価指標として作成したImpairments Scale(IS)、意欲低下の指標としてApathy Scale(AP)を使用した。LSAと基本属性およびその他の評価指標との関連をt検定、分散分析と相関係数にて分析後、重回帰分析を用いて関連性を検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果および考察】全体のLSAの平均は46.4±22.8(2-120)であった。男性のLSAは51.7±25.5、女性で41.9±19.2と、有意に男性が高値であった。虚弱高齢者は他の疾患を有する対象に比較して高値であった。LSAと年齢、IADL、FIM、FMS、IS、ASとの関連はすべて有意であった(相関係数はそれぞれ、-0.391、0.501、0.506、0.520、0.470、-0.182)。LSAを従属変数とし、疾患以外の7変数を独立変数に投入したステップワイズ法による重回帰分析の結果、FMS、年齢、ISの3変数が選択され、決定係数は0.383(p<0.01)であった。以上より、活動水準としての移動の評価指標として有用であることが示唆された。LSAは簡便に評価可能な移動の評価指標であり、移動の制約状況の把握や他の評価との併用による適切な介入計画の作成に活用できる可能性がある。

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© 2007 日本理学療法士協会
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