理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1264
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理学療法基礎系
起き上がり動作所要時間の信頼性および日常生活活動実行状況との関連について
*篠原 智行臼田 滋
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キーワード: 起き上がり, 信頼性, FIM
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抄録

【目的】起き上がりは日常的に行われる動作である。高齢者では年齢、BMI、バランス、ADLなどとの関連が報告されているが、脳血管障害(CVD)患者についての検討は少ない。今回起き上がり動作所要時間計測の信頼性とADLとの関連について検討した。
【方法】対象はCVD患者15名(62.5±12.8歳)、整形外科疾患患者15名(73.6±13.6歳)、健常者15名(26.0±2.5歳)である。研究の趣旨を説明し、同意書への記名を得た。方法はプラットホーム上背臥位から非麻痺側や健側へ起き上がり、端坐位ですぐ脇に設置された台上の雑誌に触れるまでの時間を1名の検者が計測した。健常者は右方向への起き上がりとした。楽な速さ(至適速度)と、できるだけ速い速さ(最大速度)の2条件での起き上がり動作を、それぞれ3回ずつ計測した。所要時間は3回の平均値とした。患者群ではADL実行状況をFIMにて測定した。所要時間の検者内信頼性についてICC(1,1)を算出した。群間の比較は一元配置分散分析および多重比較(Bonferoni法)を行った。患者群では所要時間および変動係数(CV)とFIMとのSpearmanの順位相関係数(rs)を求めた。有意水準は5%未満とした。
【結果】至適速度におけるCVD患者の所要時間は8.3±3.7秒、CVは7.7±4.4、整形患者の所用時間は6.5±4.2秒、CVは9.3±4.8、健常者の所用時間は2.6±0.6秒、CVは6.0±4.1であった。ICC(1,1)はCVD患者0.95、整形患者0.97、健常者0.78であった。3群間の所要時間に有意差が認められ、健常者と比較して患者群では、有意に所要時間が延長したが、CVについては有意差は認められなかった。FIMとの相関については、CVD患者の所要時間に有意な負の相関が認められた(rs=-0.68)。
最大速度でのCVD患者の所要時間は6.7±6.2秒、CVは11.0±8.2、整形患者の所用時間は3.4±1.5秒、CVは8.2±4.8、健常者の所用時間は1.5±0.2秒、CVは5.4±2.9であった。ICC(1,1)はCVD患者0.83、整形患者0.93、健常者0.75であった。3群間の所要時間とCVに有意差が認められ、CVD患者と健常者の所要時間およびCVに有意差が認められた。FIMとの相関については、CVD患者の所要時間(rs=-0.73)とCV(rs=-0.62)、整形患者の所要時間(rs=-0.69)に有意な負の相関が認められた。
【考察】ICC(1,1)は患者群ではどれも0.9以上であり、起き上がり所要時間計測は検者内信頼性の高い評価と考えられた。CVの群間の差は最大速度で認められた。また最大速度では各患者群でFIMと起き上がり所要時間に有意な相関があり、患者の能力を評価するには最大速度での起き上がりが妥当と考えた。CVは動作再現性の能力を評価でき、起き上がり動作のパターンやタイミングがどれだけ安定しているかをみる1つの指標となり得ると考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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