理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 633
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理学療法基礎系
脳血管障害患者における起き上がり所要時間と10m最大歩行速度との比較
篠原 智行臼田 滋
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抄録

【目的】
起き上がりは日常的に行われる動作であるが、脳血管障害(CVD)患者についての検討は少ない。今回CVD患者の起き上がり所要時間の特徴を検討することを目的とし、10m最大歩行速度(10MWS)と比較した。
【方法】
対象はCVD患者37名である。研究の趣旨を説明し、同意書への記名を得た。起き上がり所要時間と10MWSをそれぞれ3回ずつ計測した。起き上がり所要時間は最大速度での動作を指示し、プラットホーム上背臥位から非麻痺側へ起き上がり、静止した端座位をとるまでの時間を計測した。起き上がり所要時間と10MWSの平均時間についてPearsonの相関係数を算出した。また3回計測した両動作の変動係数(CV)について対応のあるt検定を行った。さらに対象者を歩行自立群と歩行監視群に分け、起き上がり所要時間と10MWSの時間およびCVについて対応のないt検定にて群間比較を行った。いずれも有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象は平均64.7歳、発症からの平均日数68.0日であった。起き上がり所要時間の平均3.8±2.4秒、CV8.4±5.6、10MWSの平均20.3±22.6秒、CV5.1±2.7であった。両動作の時間平均には有意な相関が認められた(r=0.54、p<0.01)。CVには有意差が認められた(p<0.01)。歩行自立群は19名、歩行監視群は18名であった。起き上がり所要時間は自立群3.1±1.6秒、監視群4.7±2.8秒、CVは自立群7.1±4.1、監視群9.7±6.5であり、時間にのみ有意差を認めた(p<0.05)。10MWSは自立群8.0±2.9秒、監視群33.3±26.7秒、CVは自立群5.0±3.2、監視群5.2±2.0であり、時間にのみ有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】
早く起き上がれるほど歩行速度も速く、また歩行自立度が高いことが予想された。起き上がり所要時間のCVが有意に大きいことは時間計測の誤差の影響も考えられるが、CVD患者では歩行より起き上がりの方が再現性の乏しい動作であることが示唆された。また歩行自立度で分けた群間比較では、起き上がり所要時間のCVは有意ではないが歩行自立群でやや小さい傾向にあった。起き上がり動作の再現性は歩行能力の高さと関連すると考えられた。本研究では両動作に関与する要素との検討はできていないが、起き上がり所要時間やCVは体幹機能や動作要領の影響を受けることが考えられ、起き上がりは歩行能力との関連性もあると考えられた。
【まとめ】
・CVD患者37名を対象に起き上がり所要時間と10MWSの計測を行い、両動作の比較を行った。
・起き上がり所要時間のCVが有意に大きかった。
・歩行自立群、監視群に分け群間比較を行ったが、起き上がり所要時間と10MWSのCVの有意差はともに認められなかった。

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© 2008 日本理学療法士協会
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