理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1544
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理学療法基礎系
随意運動中の電気刺激が大脳皮質血流量に及ぼす影響
山口 智史加藤 誠横山 明正田辺 茂雄村岡 慶裕大須 理英子大高 洋平藤原 俊之近藤 国嗣里宇 明元
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抄録

【目的】
近年,脳卒中片麻痺患者に対する治療として随意筋電量に比例し刺激強度をコントロールする電気刺激法が報告されており,その効果は中枢神経系の可塑性にも影響すると考えられている.本研究の目的は,随意運動のみ,電気刺激のみ,随意運動+電気刺激の3種類の異なる課題が大脳皮質血流量に及ぼす影響の違いを明らかにすることである.
【方法】
対象は健常成人9名で,事前に実験内容について説明し同意を得た.局所脳血流の評価には近赤外分光装置FOIRE-3000(島津製作所製)を用いた.測定用プローブは国際10‐20基準電極法に基づく基準点Cz(頭頂部)を中心に,一次運動野および一次感覚野周辺(C3およびC4含む)に各3cm間隔で20チャンネルを配置し,酸素化ヘモグロビンの変化をサンプリング周波数6.3Hzで記録した.刺激筋は左前腕の橈側手根伸筋と総指伸筋とした。刺激周波数は30Hz,刺激強度は痛みがなく手関節最大背屈が可能な強度とした。刺激波形は,パルス幅300μsで通電時間3秒,休止時間3秒とした.
課題は,随意最大背屈運動のみ,電気刺激による最大背屈運動,電気刺激+随意運動による最大背屈運動の3種類を30秒の安静後に連続して計測した.座位にて肘掛に前腕を置き安楽な状態とし,閉眼した状態で計測した.各課題とも安静15秒間-課題30秒間-安静15秒間を5セット施行し,課題中は3秒間の課題遂行と安静を計5回行った.解析部位は右側の一次運動野および感覚野周辺とした.課題前後の安静時酸素化ヘモグロビン変化量平均(X)と標準偏差(SD)を基準として課題中の測定値(xi)を標準化した値[zi=(xi-X)/SD]を算出し,課題中の脳血流量の変化とした.次に,信号対雑音比が十分でないものを除外し,課題毎に波形を加算平均した後に課題中の平均値を算出した.統計処理は,Shapiro-Wilk検定後にLevene検定を行い,データの正規性と等分散性を確認した.さらに一元配置分散分析,多重比較検定(Tukey’s HSD)を行い,各課題によるに脳血流量の変化をそれぞれ一次運動野,一次感覚野で比較した.有意水準は5%とした.
【結果】
一次運動野の脳血流量の変化は,随意運動のみで0.82±0.14,電気刺激のみで0.58±0.23であるのに対し、随意運動+電気刺激の場合、0.98±0.14と最も高値を示した.また一次感覚野でも,随意運動のみで0.86±0.29,電気刺激のみで0.56±0.16であるのに対し、随意運動+電気刺激で0.94±0.18と最も高値を示した.多重比較検定では,一次運動野,一次感覚野ともに随意運動のみと電気刺激のみ(p<0.05),電気刺激のみと随意運動+電気刺激(p<0.01)に有意差を認めた.
【考察】
今回の結果は,随意運動と電気刺激を同時に行うことが大脳皮質血流量をさらに増加させ,高い治療効果が得られる可能性を示唆するものと考えられる.今後,脳卒中片麻痺患者を対象とし,その治療効果と大脳皮質への影響を検討していきたい.

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© 2008 日本理学療法士協会
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