理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 147
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骨・関節系理学療法
足関節背屈制限がしゃがみこみ動作に及ぼす影響
粕山 達也坂本 雅昭中澤 理恵川越 誠加藤 和夫
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抄録

【目的】日本の文化において,しゃがみこみ動作は必要不可欠な動作である.しゃがみこみ動作は,下肢の関節柔軟性が必要であり,特に足関節の背屈制限が動作を障害することが諸家により報告されている.そこで今回,足関節背屈制限の有無がしゃがみこみ動作に及ぼす影響について,動作中の関節角度,関節角速度の変化から比較検討したので報告する.

【方法】本研究の目的を十分に説明し,同意の得られた健常成人男性29名(平均年齢21.3±1.4歳)を対象とした.そのうち,足関節の背屈制限を有さない17名をNormal群,制限を有する12名をTight群とした.足関節背屈制限の規定は,予備検討を参考に足関節背屈角度が13度以下のものとした.しゃがみこみ動作は,両踵部内側を接触させ,全足底接地した状態で,膝を開かないように施行し,動作速度は対象者の至適速度とした.反射マーカーは,1)肩峰,2)腸骨稜中間,3)大転子,4)膝関節外側上顆,5)外果,6)第5中足骨底の計6箇所に貼付し,右側面よりSONY社製デジタルビデオカメラを用いて,サンプリング周波数60Hzにて動作を測定した.取り込んだ画像から二次元画像解析ソフト(Silicon COACH社製,Silicon COACH pro,Ver6.1)を使用して,体幹,股関節,膝関節,足関節の関節角度の算出を行い,関節角度,関節角速度および動作所要時間を測定し,各群間で比較検討した.

【結果】しゃがみこみ動作中の関節可動域および動作所要時間において,Tight群で足関節,膝関節の可動域に有意に減少が認められ(p<0.01),所要時間も有意に長かった(p<0.05).また,関節角速度の比較において,Normal群では足関節の角速度が最大値に達した後に膝関節や股関節の角速度の最大値がみられるのに対して,Tight群では膝関節の角速度の最大値が足関節の最大値より前にみられ,股関節の最大値は足関節の最大値以降にみられる傾向を示した.

【考察】足関節の背屈制限を有する者では,膝関節屈曲角度を小さくし,代償的に股関節や体幹を屈曲することで重心を制御していると考えられ,動作所要時間も長くなったことから,足関節背屈制限は円滑な運動制御を妨げ,他関節の運動方略に影響を与えることが示唆された.また,足関節背屈制限は膝関節の角速度を減少させ,矢状面上での運動を障害することから,足部外転,下腿回旋や膝関節内外反などの水平面や前額面での運動で背屈制限を代償している可能性があり,今後は三次元動作解析装置などを用いた詳細な動作分析の検討が必要であると考えられた.

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© 2008 日本理学療法士協会
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