理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 958
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骨・関節系理学療法
サッカーの試合中におけるオフ・ザ・ボールのステップ動作
「身体の構え」に着目して
小川 美由紀中澤 理恵坂本 雅昭
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抄録

【目的】
サッカーの試合では,ボールに触れずに移動する局面(以下,オフ・ザ・ボール)が大半を占める.サッカーにおける傷害はこのような状況下で発生する可能性があり,受傷機転となり得るオフ・ザ・ボールのステップ動作は注目すべきといえる.そこで本研究では,サッカーの試合中におけるオフ・ザ・ボールのステップ動作の分類を試み,その特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】
高等学校男子サッカー選手を対象に,試合中の動きをビデオカメラにて撮影し,その録画画像よりオフ・ザ・ボールのステップ動作の分類を行った.次に高等学校男子サッカー選手18名を対象とし,第84回全国高等学校サッカー選手権大会県予選において,対象選手をビデオ撮影し,その録画画像を用いてステップ動作の実施状況を調査・分析した.対象者はポジションによりオフェンス群,サイド群,ディフェンス群の3群に分け,各ステップ動作の実施回数および全体に占める時間割合(以下,時間割合)について群間比較を行った.
【結果】
ステップ動作は,サイドステップ,クロスオーバーステップ,バックステップ,キープステップ,ダッシュ,半身ダッシュ,ジョグ,半身ジョグ,バックジョグ,歩行,バック歩行の11種類に分類された.これらのステップ動作は40分間の試合において延べ462.7回行われ,この実施総数はディフェンス群,オフェンス群,サイド群の順に多かった.また時間割合では,歩行(45.7%)とジョグ(32.3%)が大半を占め,半身ダッシュ・半身ジョグを合わせた半身での移動(6.2%)がそれに次いで多い結果であった.群間比較では,サイド群におけるキープステップの実施回数が有意に低値(p<0.05)を,ディフェンス群におけるサイドステップの時間割合が有意に高値(p<0.05)を示した.
【考察】
ステップ動作の分類を行うにあたって,一般的な分類要素である速度・進行方向に加え,身体の構えという概念を取り入れた.まず進行方向と異なる方向に視線を向け,頭部や体幹を回旋した状態を半身と定義した.また開脚して低く構え,その場で下肢を踏みかえる動作をキープステップと定義し,各々身体の構えという点から他と区別した.半身はその回旋要素から傷害を引き起こす可能性があると予測され,さらに今回の結果において実施割合が多かったことから,傷害発生機転となり得る動作として注目する必要があるといえる.またキープステップは,試合中におけるステップ動作の実施総数が多い群ほど高頻度に行われる傾向が示され,ステップ動作の切替え頻度との関連が示唆された.主に次の動作への準備として行われることの多いキープステップは,動作の切替え時にかかる身体への急激な負担を軽減し得ると推察され,傷害予防への可能性が期待される.今後は各ステップ動作と傷害発生の関連性を検討し,予防的介入につなげることが課題である.

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© 2008 日本理学療法士協会
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