理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1410
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骨・関節系理学療法
頚髄症における術後早期の機能障害の回復と術後1か月の機能的制限の改善との関係
樋口 大輔新谷 和文内山 靖
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抄録

【緒言】頚髄症は、歩行障害や手指巧緻運動障害、四肢のしびれなどが生じる疾患で、症状が悪化すると手術が適応となる。これまでの研究で、機能障害は術前から離床時にかけて回復し、機能的制限は離床時から術後1か月にかけて改善することが明らかとなっている。本研究では、術後早期の機能障害の回復の程度と術後1か月にかけての機能的制限の改善の程度との関係を明らかにし、理学療法の内容と効果について検証することを目的とした。
【方法】頚髄症を発症し手術適応となった50人を対象とした(男性34人・女性16人、62.6±11.9歳)。頚髄症以外の併存症による運動障害や感覚障害が明らかな者は除外した。なお、本研究は施設内での許可を得た後に、すべての対象に対して研究に関する十分な説明を行い研究参加の同意を文書で得た。調査・測定項目には、これまでの研究で信頼性や妥当性が確認されている指標を選択した。機能障害4項目(下肢:Foot pat test[端座位で10秒間での足関節底背屈の回数]・JOAスコアの下肢感覚[0~2点の機能評価]、上肢:10秒テスト[10秒間での手指屈伸の回数]・JOAスコアの上肢感覚)と機能的制限3項目(下肢:10m歩行時間・TUG、上肢:STEF[サブテスト8~10の所要時間の合計])であった。機能障害は術前と離床時(術後1週以内)に、機能的制限は術前と術後1か月に調査・測定し、それぞれの変化量を算出した。機能障害の変化量の中央値を基準に2群に分類して機能的制限の変化量をMann-WhitneyのU検定を用いて比較し、さらに対象ごとの機能障害と機能的制限の指標間の関係を解析した。
【結果および考察】1)下肢Foot pat test改善群では、10m歩行時間の変化量(4.6±10.0秒)とTUGの変化量(4.9±7.9秒)が有意に高値であった。ただし、Foot pat testが不変あるいは悪化した者でも75.0%(16人中12人)は10m歩行時間(0.6±1.0秒)あるいはTUGに改善(1.1±1.7秒)がみられた。2)上肢10秒テスト改善群では、STEFの変化量が有意に高値であったが(21.4±30.5秒)、下肢の機能的制限の変化量には有意差を認めなかった。また、10秒テストが不変あるいは悪化した61.1%(18人中11人)でもSTEFに改善がみられた(8.1±19.1秒)。3)JOAスコアの感覚については、上下肢ともに改善群と非改善群との間に機能的制限の変化量に有意な差はみられなかった。以上の結果から、上下肢それぞれの術後1週以内の機能障害の回復が大きい場合には術後1か月にかけての機能的制限の改善も大きいことが示された。また、機能障害の回復がみられなくても、多くの対象で機能的制限には改善がみられたことから、手術とともに理学療法による効果の可能性が示唆された。
【結語】手術適応の頚髄症に対する理学療法を実施する場合には、術後早期の機能障害の回復と術後1か月にかけての機能的制限の改善との関連性を考慮することが求められる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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