理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1429
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骨・関節系理学療法
側方傾斜刺激時の姿勢反応について
武井 健児坂本 雅昭中澤 理恵白倉 賢二
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抄録

【目的】
足関節捻挫では内反捻挫がその多くを占めるが,立位時の足部への内反刺激時に対する勢反応についての報告は少ない.本研究では,立位における足底面への側方傾斜刺激に対する反応を足関節のみならず全身的な姿勢反応から解析し,足関節捻挫発生機序解明の一助とすることを目的とした.
【対象及び方法】
対象は本研究に同意の得られた成人男性20名(21.9±1.7歳,足関節捻挫既往者含む)とした.
本研究に関連すると思われる足部機能として足関節背屈角度, LegHeelAngle,足部外反筋力(HHD)を測定した.
傾斜刺激は0.2秒間に9°,0.4秒間に9°,0.2秒間に4°,0.4秒間に4°の4種類を用いた.傾斜刺激時の姿勢反応は三次元動作解析装置を用い,反応開始時間(反応開始までの時間),反応方向(肩甲帯と骨盤の傾斜・回旋,足部傾斜の角度),反応時間(反応開始点から反応方向への角度の最大値までの時間)を測定した.
各刺激による測定項目は,独立サンプルのt検定を用い比較検討し有意水準は5%未満とした.
【結果】
対象者の足関節背屈角度は28.0±5.2°,外反筋力は162.0±37.4N,LegHeelAngleは10.8±4.4°であった.
同一刺激角度での刺激時間間の比較では,骨盤回旋角度は,0.2sec・4°と0.4sec・4°,0.2sec・9°と0.4sec・9°で刺激時間0.2秒の方が非傾斜側への回旋が大きかった(p<0.05).肩傾斜角度は,0.2sec・9°と0.4sec・9°で刺激時間0.2秒の方が非傾斜側への傾斜が大きかった(p<0.05).また反応時間は,刺激時間が長い程長い傾向を示した.
同一刺激時間での刺激角間の比較では,足部傾斜の反応開始時間は,0.2sec・4°と0.2sec・9°で刺激角度4°の方が反応開始時間が遅かった(p<0.05).また反応方向の角度は,刺激角度が大きい程大きい傾向を示した.
対象者20名における4種類の傾斜刺激時の姿勢反応計80件を姿勢反応から検討した.反応開始時間で部位別の順序では,足部→骨盤→肩甲帯の順の組み合わせが計56件と最も多かった.反応方向で骨盤と肩甲帯の回旋方向についてみると,骨盤回旋は非傾斜側への回旋79件,肩甲帯回旋では傾斜側56件,非傾斜側24件であった.反応時間でみると,骨盤傾斜が最も短かったのが55件,足部傾斜が最も長かったのが43件と最も多かった.
【考察】
刺激角度が大きい程反応角度が大きく,刺激時間が長い程反応時間が長い傾向となった.また刺激時間が短い突発的な傾斜刺激において,反応角度が大きくなる傾向が示唆された.
反応方向の回旋方向では,骨盤と肩甲帯が逆方向に回旋し体幹が捻れるパターンと両部位が非傾斜側へ回旋し体幹の捻れがないパターンがみられた.体幹の捻れがないパターンでは,両部位の非傾斜側への回旋が傾斜側下肢の回旋を増加させ,knee out-toe inとなり,足関節内反ストレスが増大する可能性が考えられた.体幹の捻れパターンと非捻れパターンの違いとなる要因の特定はできなかったが,今後この要因を検討することが課題と考える.

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© 2008 日本理学療法士協会
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