理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 186
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物理療法
随意収縮と同程度の関節モーメントが得られる経皮的電気刺激の検討
田辺 茂雄山口 智史上原 信太郎村岡 慶裕木村 彰男
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抄録

【目的】
現在,脳卒中患者や脊髄損傷患者に対する治療方法として,トレッドミル歩行中に機能的電気刺激を行う手法が研究されている.機能的電気刺激については,健常者が歩行した際に筋収縮が認められる相において,一定の強度で刺激を行う方法が一般的である.しかし,この方法では筋収縮が認められる相の全域で強い刺激を行うため,通常の滑らかな歩行が得られない.滑らかな歩行を実現するためには,随意筋収縮と同程度の出力が得られる刺激強度を算出する必要がある.今回我々は足関節背屈モーメントを媒介変数として,前脛骨筋の随意収縮による筋電量と電気刺激量の関連を検討し,その関係式を算出した.
【方法】
対象は下肢に障害の既往のない健常成人7名とした.被験筋は前脛骨筋,運動課題は足関節背屈運動,測定肢位は背臥位とした.まず,随意筋収縮と関節モーメントの関係を検討するため,足関節背屈運動中の前脛骨筋の筋電量と足関節背屈モーメントを測定した.随意収縮による最大背屈モーメントを測定した後,随意背屈運動によって最大背屈時の0~40%のモーメントが生じた際の筋電量を被験者毎に5回以上測定した.筋電量の測定には日本光電社製WEB-5000を使用し,1秒間の積分値を算出した.関節モーメントの測定には安川電機社製足関節用TEMを使用した.次に,経皮的電気刺激と関節モーメントの関係を検討するため,前脛骨筋に対する電気刺激の強度と足関節背屈モーメントを測定した.刺激は定電流刺激とし,1msの矩形波を用いて20Hzで刺激した.刺激強度を2mA毎に40mAまで増加させ,それぞれの刺激強度での足関節モーメントを測定した.経皮的電気刺激には日本光電社製MEB-2216を使用した.筋電量および関節モーメントはそれぞれ最大随意背屈時の値で正規化し,随意筋収縮と関節モーメントの関係,経皮的電気刺激と関節モーメントの関係について,それぞれ回帰分析を行った.
【結果】
随意筋収縮と足関節背屈モーメントは近似式M=-0.021C2+2.218Cによって0.77と高い相関係数が得られた(Mは足関節背屈モーメント,Cは随意収縮による筋電量).経皮的電気刺激と足関節背屈モーメントにおいても近似式M=0.018I2-0.154Iによって0.87と高い相関係数が得られた(Mは足関節背屈モーメント,Iは電気刺激強度).
【考察】
随意筋収縮と足関節背屈モーメント,経皮的電気刺激と足関節背屈モーメントはどちらも二次の近似式で高い相関係数が得られたことから,足関節背屈モーメントにおける前脛骨筋の随意収縮による筋電量と電気刺激量の関係は0.018I2-0.154I=-0.021C2+2.218Cで表すことが出来ると考える(Iは電気刺激強度,Cは随意収縮による筋電量).

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© 2008 日本理学療法士協会
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