日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会2008年年会
セッションID: R1-09
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R1:マグマプロセス・サブダクションファクトリー
スラブ由来流体相が超臨界流体であることの意義
*川本 竜彦神崎 正美三部 賢治松影 香子小野 重明
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抄録

私達はSPring-8の放射光X線を高温高圧実験装置の内部に引き入れて、水とマグマの間の関係のその場観察を行ってきた。その間、Sr斜長石メルトと水(Mibeほか 2004 GCA)、ペリドタイトと水(Mibeほか 2007 JGR)、玄武岩と水(準備中)などを報告してきた。中でも、ペリドタイトと水の臨界終端点は3.8GPa、玄武岩と水のそれが3.4GPaという圧力は、これまでの予想値よりもだいぶ低いものである。さらに、高Mg安山岩と水や、堆積岩と水の間のそれは、それぞれ2.9GPa、2.6GPaで、火山弧の下のスラブ由来の流体は超臨界状態になっているはずだ。 一方、スイス工科大学のシュミット教授とウルマー教授のグループも、この問題に関して複数の論文を公表している(Kesselほか 2005 EPSL、Melekhovaほか 2007 GCA)。私達は彼女らの実験は臨界終端点を決定するのに役にたっていないと判断する。 私達はすでに臨界終端点がこれまでにほぼ決定されているアルバイトー水系を用いて、X線ラジオグラフィーで臨界終端点の決定を試みた。その結果は1.7±0.3GPaで、Shen and Keppler (1997 Nature) とStalder et al (2000 Am Min)と一致した。私たちの臨界終端点の結果は、従来の実験で推定される同程度の精度で決定できていると判断する。また、Melekhovaほか(2007)はMgO-SiO2-H2O系で実験を行っているので、私たちもMgO-SiO2-H2O系での実験も開始した。結果は、1.5Mg/Si系で臨界終端点は4.1GPa、2Mg/Si系で3.3GPaという、Melekhovaほか(2007、2.9Mg/Siで11.5GPa)に比べたいへん低い圧力条件を得た。 スラブの脱水反応によりマントルウェッジに供給される超臨界流体に含まれるケイ酸塩成分の多寡は温度に依存する。そして、それらはマントルウェッジを上昇する際に、水にとむ流体と水に飽和したメルトに分離することが予想できる。その際、元素の分配が起こる。例えばAyers and Eggler(1995 GCA)は1.5GPaと2GPaで水流体と安山岩メルトの間の元素の分配を報告しているが、1.5GPaでは、SrはYよりもフルイドにより分配され、2GPaではSrはYよりもメルトにより分配されている。分配係数はメルト(と流体)の化学組成と圧力により変化すると予想される。今後、メルトと流体の分配係数をよりよく理解することが求められる。

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© 2008 日本鉱物科学会
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