日本公衆衛生雑誌
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原著
特別養護老人ホームの入所の緊急性に影響する要因の分析
岸田 研作谷垣 靜子
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2008 年 55 巻 5 号 p. 295-305

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抄録

目的 介護保険導入後における特別養護老人ホームの入所の緊急性に影響する要因を明らかにすること。
方法 対象は,中国地方の 2 つの市に在住する在宅介護を継続する同居世帯である。特別養護老人ホームの入所の緊急性の指標は,世帯が入所申請をしていない場合に 0,入所申請をしている場合は,世帯を担当するケアマネジャーが「将来,必要になったときに入所したらよい」と判断した場合は 1,「しばらくは待つことができる」と判断した場合は 2,「できるだけ早く入所した方がよい」と判断した場合は 3 をとる。推定は,緊急性の指標を従属変数,在宅介護の継続に影響すると考えられる個人・世帯属性を独立変数とする順序ロジットモデルである。推定では,従属変数のカテゴリーによって係数が異なる可能性を考慮した。
成績 必要な変数に欠損値がなく分析対象になったのは,146の入所申請世帯と494の非入所申請世帯であった(計640世帯)。入所申請者間でもケアマネジャーが判断する適切な入所時期には差があり,「できるだけ早く入所したほうがよい」(29%),「しばらくは待つことができる」(32%), 「将来,必要になったときに入所すればよい」(39%)であった。多変量解析の結果,入所の緊急性が高いことと有意に関連していたのは,要介護度が高いこと,主介護者の自覚症状数,家族が介護に消極的であること,A 市在住,持ち家以外であること,事業者都合によるショートステイの利用制限,であった。
考察 入所の緊急性については,入所申請の有無のみならず,入所申請者間の緊急性の差も考慮すべきである。入所の緊急性が高いことと有意に関連していたのは,要介護度が高いこと,主介護者の自覚症状数,家族が介護に消極的であること,A 市在住,持ち家以外であること,事業者都合によるショートステイの利用制限,であった。

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© 2008 日本公衆衛生学会
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