行動医学研究
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原著
看護師の職務ストレッサー, バーンアウトおよび身体的健康問題の関連 : 質問紙および免疫指標からの検討
磯和 勅子
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2004 年 10 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

本研究の第1の目的は、看護師における職務ストレッサーとバーンアウト、身体的健康問題の因果関係を共分散構造分析によって検討することであった。また、第2の目的は、免疫指標 (唾液中s-IgA) により、看護師の職務ストレスが生体に及ぼす影響を評価することであった。
1年以上の経験を持つ看護師138名 (Mean 32.1、SD 8.8) を対象とし、日本語版NIOSH職業性ストレス調査票および日本語版MBIを用いて、職務ストレッサー、身体的自覚症状、バーンアウトを測定した。また、日勤勤務の前後 (8:45、17:00) において、唾液中の分泌型免疫グロブリンA (s-IgA) を測定した。
共分散構造分析の結果、採択された因果モデルの適合性は十分なものであった (GFI=.93、AGFI=.87)。そして、職務ストレッサーである仕事上の葛藤と労働負荷は、共にバーンアウトの規定要因になる可能性が示された。また、職務上の葛藤と労働負荷との間にはやや強い正の相関が認められた。さらに、バーンアウトが身体的健康問題発生の可能性に強く影響していることが示された。s-IgAに関しては、勤務後のs-IgA濃度が勤務前に比べ有意に低下することが示された。また、勤務前後のs-IgA濃度の変動について、勤務 (前・後) ×職務ストレス (高群・低群) の二要因の分散分析を行った結果、交互作用が認められ、個人的達成感の低い者ほど勤務後におけるs-IgA濃度の減少の程度が大きいことが示された。
以上の結果から、職務上の葛藤及び労働負荷のような職務ストレッサーは、看護師のバーンアウトを導く可能性を持つことが示された。特に、労働負荷よりも職務上の葛藤の方がバーンアウトへの影響が強い可能性がある。そして、バーンアウトの状態が改善されず継続することによって、身体的健康問題にまで発展する可能性が示唆された。看護師の職務上の葛藤や労働負荷を低減するための対策が必要である。また、勤務前後におけるs-IgA濃度の変動が、個人的達成感という個人差変数の影響を受けたことは、同一の職場環境で勤務したとしても個人によってストレス反応が異なる可能性を示す。今後、ストレス反応の個体要因の影響を追究していく必要がある。

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© 2004 日本行動医学会
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