2007 年 54 巻 12 号 p. 857-866
目的 結核対策の一つとして,治療中断を防ぐために Directly Observed Treatment, Short-course (DOTS) が推進されている。結核罹患および治療中断の高リスク集団とされる不安定就労・生活者の DOTS 受療の経験を記述し,彼らにとっての DOTS 受療の意味を明らかにすることを目的とした。
方法 横浜市等が協働実施する寿地区の DOTS を受療する26人を研究協力者とし,参与観察・半構造化面接・診療録類の閲覧によりデータを収集した。面接は,DOTS の経験を時系列で尋ねて内容を逐語録に起こし,継続的に比較して質的に分析した。
結果 協力者は全員男性であり,55.3±8.4歳であった。分析の結果,「入院を受け入れ,生活が一変する」,「与えられた仕事を続ける自分に自信を持つ」,「自分を大事にしようとする」の 3 カテゴリが抽出された。さらに,これらを関係付け包括する中核カテゴリとして,〔DOTS を務め上げる中で生きる意味を探し,自分を大事にしようとする〕が生成された。
結論 不安定就労・生活者は,DOTS 受療を継続する中で,自身の体のことを考えて生活するようになり,生きる意味を見出して自分自身を大事にしようとしていたことが明らかとなった。