2014 年 49 巻 2 号 p. 168-175
新たに都市内交通を整備する際、その区間と経路が重複する既存交通は、運行経路の短縮や変更などの路線再編がなされることが多い。しかし、計画評価段階においては、既存交通の再編が十分に考慮されず、新しい交通施策の導入による利用者の便益が正しく評価されていない可能性がある。本研究では、新規交通施策の事例として京都市におけるLRTの導入を考え、その際の既存交通再編の有無による社会的便益の違いを比較した。なお、分析をする際には、時々刻々と変化する、自動車、公共交通機関、公共交通利用者の動きを逐次再現したシミュレーションモデルを構築することにより、乗り換え回数の増加が利便性に与える影響などについても詳細に考慮した。分析の結果,新規交通施策の導入に合わせて、新たな運賃制度の導入を含めた既存路線の再編を行う場合において、最も大きな社会的便益が得られることを明らかにした。