日本公衆衛生雑誌
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エクササイズガイド2006の認知度と身体活動量の変化
原田 和弘柴田 愛李 恩兒岡 浩一朗中村 好男
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2011 年 58 巻 3 号 p. 190-198

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抄録

目的 健康日本21の中間報告書では,身体活動•運動分野の重点課題の 1 つとして「エクササイズガイド2006の普及」が挙げられている。一方,肥後•中村(2008)によれば,エクササイズガイド2006の認知者の割合は,他の健康づくり施策よりも低いものの,エクササイズガイド2006認知者の方が歩行習慣者の割合が多いことが報告されている。本研究の目的は,エクササイズガイド2006の認知度の経時変化を検討することと,エクササイズガイド2006の認知と身体活動量との関連性を縦断的に検討することであった。
方法 対象は,社会調査モニター1100人(39.8±SD10.1歳)であった。2007年11月(T1),2008年12月(T2)の計 2 回,インターネットを用いた質問調査を縦断的に実施した。エクササイズガイド2006の認知度は,「内容を知っている」,「聞いたことはあるが内容は知らない」,「聞いたことがない•今回の調査で始めて知った」の 3 段階で評価した。週当たりの身体活動量(METs•時/週)は,IPAQ–SV(Craig et al., 2003;村瀬他,2002)を用いて推定した。Mann–Whitnney 検定を用いて,期間中にエクササイズガイド2006を認知した者と,認知しなかった者の身体活動量の変化量を比較した。
結果 エクササイズガイド2006の内容を知っていた者の割合は,T1 で1.4%,T2 で2.2%であり,認知度の有意な経時変化は認められなかった。調査期間中にエクササイズガイド2006を知った者の方が,両時点とも知らなかった者と比較して,身体活動量が低下傾向にあった(P=0.013)。
結論 1 年間で認知度は向上しておらず,我が国においてエクササイズガイド2006の普及は進んでいないことが示唆された。エクササイズガイド2006の戦略的な普及方策の検討が求められる。ただし,先行研究とは異なり,エクササイズガイド2006を認知することが,身体活動の促進に対して肯定的な影響を与える可能性は示されなかった。普及が進み,認知度が向上した段階で検討を行うことで,両者の関係がより明確となるだろう。

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© 2011 日本公衆衛生学会
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