日本公衆衛生雑誌
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テレビドラマにおける喫煙描写場面の実態
神田 秀幸岡村 智教門脇 崇早川 岳人喜多 義邦上島 弘嗣
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2003 年 50 巻 1 号 p. 62-70

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抄録

目的 映画やテレビドラマにおける喫煙シーンは未成年者の喫煙開始行動に影響を与えると言われている。そこで,わが国のテレビドラマの喫煙描写の放映回数,配役の設定,喫煙時の状況などの喫煙場面の実態を明らかにし,未成年者の喫煙行動に影響を与える一環境要因の資料とすることを目的とした。
方法 2001年 7~9 月期に放映された在京民間テレビ放送主要 5 局が地上波で放映する連続テレビドラマ 7 番組とした。対象とした番組の平均視聴率は10.1~20.3%であった。各放送を 3 分間 1 ユニットに区分し,放送時間内に登場する喫煙場面(喫煙行為そのもの)と喫煙関連場面(灰皿などの描写)のユニット数を計測した。喫煙場面では,喫煙者の配役,喫煙環境,喫煙に伴う行為の有無や喫煙場面の状況について放映ユニット数の計測を行った。
結果 1. 収録した番組全1,264ユニットの内129ユニット(全放送場面の10.2%)に喫煙場面がみられ,喫煙関連場面は258ユニット(同20.4%)にみられた。
 2. 喫煙場面では,男優(126ユニット,喫煙場面の97.7%),設定年齢20~40代(118ユニット,同91.5%),主演(72ユニット,同55.8%),1 人での喫煙場面(80ユニット,同62.0%),住宅内での喫煙(56ユニット,同43.4%)が登場した。
 3. 喫煙以外の行為を伴う喫煙場面は70ユニット(喫煙場面の54.3%),喫煙以外の行為を伴わない喫煙場面59ユニット(同45.7%)であった。
 4. 喫煙以外の行為を伴う喫煙場面では,仕事の場面(28ユニット,喫煙場面の21.7%),食事の場面(17ユニット,同13.2%)の順であった。喫煙以外の行為を伴わない喫煙場面では,開始時表題場面または終了時配役紹介場面でみられる喫煙場面(32ユニット,同24.8%),喫煙行為のみの描写(27ユニット,同20.9%)の順でみられた。喫煙を否定する喫煙関連場面は 3 ユニット(同0.2%)であった。
結論 わが国のテレビドラマでは 3 分間を 1 ユニットとして区分した場合,全ユニット中の約30%に喫煙場面または喫煙関連場面がみられた。喫煙場面は,分煙の配慮がなく,喫煙の必然性のない場面での喫煙が多く,喫煙を否定する描写が少ないことが示された。

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© 2003 日本公衆衛生学会
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