抄録
症例は61歳男性.冷汗を伴う胸痛に対し,前医で右橈骨動脈アプローチによる冠動脈造影(CAG)および右冠動脈高度狭窄部への経皮的カテーテルインターベンション(PCI)を施行した.その後右頸部痛・膨瘤が出現したため,造影CTを施行したところ,右鎖骨下動脈の起始異常と縦隔内へのextravasationを認めた.当院搬送後,右鎖骨下動脈損傷に対して緊急ステントグラフト内挿術を施行した.術後経過は良好で,術後CTでもステントグラフト部に問題なく,ステント周囲の血腫も減少し,明らかなextravasationは認めず独歩退院となった.右鎖骨下動脈起始異常および医原性損傷に対して緊急ステントグラフト内挿術を施行した症例は調べ得た限りでは認められなかった.血管損傷の際,ステントグラフト治療は考慮すべき治療であり,特に開胸手術では到達しにくい部位の出血に対しては有効だと考えられる.