抄録
Corynebacterium striatumによる人工弁感染性心内膜炎は稀である.僧帽弁置換術後に人工弁感染性心内膜炎を生じた1例を経験したので報告する.症例は77歳女性.入院4カ月前に僧帽弁置換術,三尖弁輪形成術を施行されたが,今回意識消失,ショック状態で当院に救急搬送された.経胸壁心臓超音波検査で人工弁の離開が認められ,それに伴う急性僧帽弁閉鎖不全を呈していた.経皮的心肺補助装置を導入し,緊急手術を行った.生体弁は僧帽弁輪から2/3周程度脱落し,一部僧帽弁輪が破壊されていたためウシ心膜パッチで僧帽弁輪を形成し,再僧帽弁置換術を施行した.術前の血液培養および疣贅からはC. striatumが検出された.術後6週間バンコマイシンおよびミノサイクリン投与を行い,発熱や炎症反応の上昇なく経過し退院した.