抄録
本研究は,がん性疼痛アセスメントツールとして先に発表した「痛み計」の痛みレベルの経時的かつ即時的な記録機能に加え,グラフ表示を可能にした「ペインメモリー」を開発し,入院がん患者における有用性を検討した.鎮痛薬使用中のがん患者12名は2週間,随時「ペインメモリー」に痛みレベルを記録し,グラフ化された痛みレベルを患者と医療者が共有した.その後,患者と医療者に質問紙調査を行った.結果,1日の入力回数は中央値5.25回で,「痛み計」よりも増えた.デザイン・機能に対し,患者と医療者の評価は,5段階評価のほぼ4以上であった.患者は“痛みの変化が分かった”,医療スタッフは“患者は痛みの治療に参加している”と高く評価した.以上から,ペインメモリーの使用により,入院がん患者の痛みレベルを把握する機会が増え,痛みレベルのグラフを活用することで,疼痛アセスメントに役立つ可能性を示唆した.