抄録
症例は70歳,男性.高血圧・大動脈弁閉鎖不全症で他院通院中,感冒罹患後,急激にうっ血性心不全が出現した.精査の結果,感染性心内膜炎に起因する大動脈弁逸脱による大動脈弁閉鎖不全症の悪化および左室右房交通症と診断した.4週間の抗生剤治療と心不全コントロールの後,待機的に手術を行った.左室右房交通症は弁上型であった.交通孔パッチ閉鎖術および大動脈弁置換術を施行した.パッチは心臓伝導系を傷害しないように縫合した.術直後から洞調律が維持されブロックの出現も認めず,順調な術後経過をたどった.交通孔の大きさ,位置により閉鎖方法を術前に十分に検討しなければならないと考えられた.