1996 年 48 巻 p. 89-92
症例は72歳,男性。20歳頃より時折,嚥下困難を認めていた。近医にてびまん性食道痙攣(DES)と診断され経過観察していたが,2ヵ月前より症状が増悪し,6kgの体重減少を認め,精査のため入院。上部消化管内視鏡検査では特記所見なし。食道造影検査では分節状収縮と粘液の貯留を認めた。食道内圧検査ではLES静止圧28mmHg,LES弛緩不完全,静止食道内圧陽圧であり,achalasiaの所見であった。嚥下により蠕動波は出現せず,すべて多峰性同時性収縮であった。波高は40-60mmHg,durationは6秒以上であった。以上より,本症例をDESとachalasiaがオーバーラップした病態のvigorous achalasiaと診断した。nifedipine 10mg内服投与では効果がなく,内視鏡的強制噴門拡張術を施行したところ,症状は完全に消失した。本邦において5例目と極めてまれなDESからの移行が考えられたvigorous achalasiaの1例を報告する。