国際保健医療
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タイ王国北部のHealth Centerに勤務する看護師の職務満足と宗教行動との関連
妻田 直人髙木 廣文佐山 理絵
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2015 年 30 巻 1 号 p. 23-31

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抄録
目的
  看護師の離職や不均衡が問題となっているタイ王国で、地域定着の問題を検討するために、Health Center(以下HC)で働く看護師の職務満足と宗教行動や勤務状況の関係を明らかにする。
研究方法
  タイ王国北部パヤオ県にあるHCで働く全看護師192名を対象に、基本属性、宗教行動、セルフエフィカシー、職務満足に関する無記名自記式質問紙調査を行った。回収数は135名、回収率は70.3%であった。男7名は少数のため分析から除外し、女128名のみを解析対象とした。
  基本属性間はクロス集計とχ検定を行い、セルフエフィカシー、職務満足に関しては、2群の母平均値の差の検定、一元配置分散分析、相関係数の計算と検定を行った。有意水準は5%とした。
結果と考察
  職務満足度尺度得点と1日の瞑想回数には、有意な相関(r=0.22、p=0.04)が認められた。瞑想によって自己をみつめ、心身をリラックスしストレスの低減を図ることが、職務満足の向上に関係するのではないかと考えられた。
  給料が「高い・普通」とした群と、「低い」とした群の間で、職務満足度尺度得点に有意差が認められた(p<0.01)。同様に、転職を考えたことがある群と、ない群の間で職務満足度尺度得点に有意差が認められた(p<0.01)。これらの点は、日本での研究報告結果と符合していた。
  職場選択理由で、「人の役に立ちたい」とした群と「宗教と仕事は関係ない」とした群の間で、職務満足度尺度得点に有意差が認められた(p=0.04)。HCは地域の住民と密に接する場所である。「人の役に立ちたい」とする看護師は、モチベーションを高く維持することができ、職務に満足して仕事を行うことができるものと考えられた。
まとめ
  タイ王国においても、日本と同様に転職や給料などが職務満足に関連する要因として指摘された。職務満足と宗教行動、とくに瞑想することと関連があることが示唆された。出身地に戻って仕事ができる環境作り、その地域の他の人々の役に立ちたいと思えるような職場環境の整備をすることにより看護師の職務満足を高め、離職を予防することができるものと考えられた。
引用文献 (21)
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© 2015 日本国際保健医療学会
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