抄録
目的:霊芝菌糸体培養培地抽出物 (WER) の血糖上昇抑制作用を明らかにするために,ラット骨格筋由来培養細胞(L6 細胞)を用いて,糖輸送体 4 (GLUT4) の膜移行と糖取り込み,さらに,このプロセスに関与する細胞内シグナル伝達系を検討した.方法:WER 処理後,細胞内 GLUT4 を蛍光免疫染色法およびウエスタンブロット法により,さらにグルコースの細胞内取り込み量を解析した.また,細胞内シグナル伝達因子の活性化をウエスタンブロット法と種々の阻害剤による糖取り込み量から評価した.結果:WER は L6 細胞内の GLUT4 遺伝子の発現量およびタンパク質量に影響を与えなかったが,処理濃度に依存して細胞膜上の GLUT4 を増加させた.また,GLUT4 量の増加に比例してグルコースの細胞内取り込みが増加した.さらに,GLUT4 の細胞膜への移行に細胞内の PI3K/Akt,PKC,AMPK を介したシグナル伝達系が関与し,WER がインスリン抵抗性を改善することで血糖の上昇抑制に寄与するものと考えられた.