日本プライマリ・ケア連合学会誌
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原著(研究)
高齢者医療や介護を中心とした学外診療所実習を円滑に行うための事前知識確認の必要性
工藤 欣邦川崎 紀則藤岡 利生
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2010 年 34 巻 1 号 p. 32-37

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抄録
【目的】高齢者医療や介護を中心とした学外地域医療実習を行うにあたり, 実習に必要と考えられる基礎知識を学生がどの程度持ち合わせているか調査を行い, 実習前における事前知識の確認や基本事項説明の必要性について検討を行った.
【方法】大学附属病院で10ヵ月間, 内科系, 外科系の実習を終了した後, 当院へ実習に来院した医学科5~6年生70名を対象とし, 学外実習で必要と思われる基礎知識に関する11項目の設問を記入方式で回答させた.
【結果】設問に対し適正な回答をした学生の割合は以下の通りであった. 有床診療所と病院の病床数の違い ; 11.4%. 公的医療保険制度の適用に関する設問 ; 20.0%, 高齢の女性患者に対し「名前」ではなく「おばあちゃん」と呼ぶ事が不適切となる可能性を指摘 ; 68.6%, 学校保健法で定められたインフルエンザ罹患時の出席停止期間 ; 87.1%, 経口摂取の困難な患者に対する栄養法 ; 58.6%, 注射針とカテーテルの太さに関する知識 ; 71.9%, クレンメの役割 ; 92.9%, 成人用輸液セットの1mlに相当する滴下数 ; 15.7%, 通常のシリンジとカテーテルチップ型シリンジの違い ; 18.6%, デイ・ケアやデイ・サービスの利用は「介護保険」を適用 ; 82.9%, その概念や特徴についての説明文を読み「グループホーム」と回答 ; 37.1%.
【結論】高齢者医療や介護を中心とした学外実習を行うにあたり, 医療制度や医療器具に関する基礎知識を十分に持ち合わせていない学生が少なくない事が判明した. 実習中の事故やトラブルを防止し, 実習内容の理解度を向上させるためには, 実習前における事前知識の確認や基本事項の説明が極めて重要であると考えられた.
引用文献 (18)
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© 2010 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
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