1993 年 42 巻 p. 259-262
症例は26歳男性。25歳時に急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行された。1992年4月,大量下血とともにショックに陥ったため,当科に入院となった。入院時バイタルサインは正常。高度の貧血所見を認めたが,他の異常所見を認めなかった。大腸内視鏡検査では,盲腸に拍動性出血を伴う絨毛状の隆起性病変を認めたため,電気凝固により止血した。2回目の内視鏡検査時にポリペクトミーを行ったが,このとき病変起始部から絹糸が出現した。病変部の病理組織像はリンパ球,形質細胞の浸潤を中心とした炎症性変化が主体で,異型性は認められなかった。別の部位に出血源が存在する可能性も考えられたため,血管造影,腹部CTスキャンを行ったが,空腸に動静脈吻合が認められるのみで,出血源となりうる病変を指摘しえなかった。以上より虫垂切除術施行後に盲腸に絹糸を核とした隆起性病変を形成し,持続的出血をきたしたと診断した。