抄録
症例は73歳男性.生体弁機能不全による重症大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁再置換術を行ったが,術直後から両側肺野透過性の低下を伴う低酸素血症を認め,血圧低下も進行したためIABPおよびPCPSを導入した.心エコーなどの検査所見から心原性肺水腫は否定的であり,possible transfusion-related acute lung injury(possible TRALI)と診断し厳重な管理を行った.術後2日目から改善傾向を認め,術後11日目に人工呼吸器を離脱し,特に後遺症なく術後50日目に軽快退院した.心臓手術患者はTRALIのリスクが高く,輸血後に低酸素血症を認めた場合はTRALIを鑑別診断として考慮し,迅速な診断と適切な対応を行うことが重要である.