2015 年 76 巻 7 号 p. 1604-1608
症例は42歳,男性.腹痛を主訴に当院救急外来を受診.CTにて限局性の小腸炎の診断で点滴目的に入院となった.診察時,陰嚢浮腫を認めた.弟や姪が非対称性の顔面や口唇の浮腫をきたした家族歴があり,しばしば腹痛を呈していたことから遺伝性血管浮腫を疑い,補体のC4およびC1インヒビター(C1-INH)を検査した.C4,C1インアクチベーターはいずれも低下しており,遺伝性血管浮腫と診断した.遺伝性血管浮腫はC1-INHの量的欠損または機能的な減弱によって起きる遺伝性疾患である.精神的・肉体的ストレスを誘因として顔面や咽頭,腸管浮腫をきたす.稀な疾患ではあるが,急性腹症を呈する疾患として鑑別に挙げるべきである.今回,われわれは当院において遺伝性血管浮腫の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.