日本障害者歯科学会雑誌
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臨床集計
大学病院スペシャルニーズ歯科センターに関わる,地域の障害者の歯科受診動態調査
田尻 絢子森 貴幸村田 尚道前川 享子野島 靖子関 愛子神田 ゆう子細坪 充裕東 倫子孫田 哲郎角谷 真一上原 進江草 正彦
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2015 年 36 巻 2 号 p. 149-155

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抄録

近年,医療の形態が医療機関完結型から地域完結型へ変化していることを踏まえ,当センターでは地域の障害者・児の生涯にわたる口腔のQOL向上を目的とした地域連携クリニカルパスの研究を進めている.2006年度から2013年度の初診患者を対象とし,診療録をもとに地域の障害者の歯科受診動態について調査したので報告する.
対象患者は697人であった.主障害名は自閉症スペクトラム障害が最も多かった.居住地は岡山市内が295人(42.3%)で最も多かったが,1989年度から2006年度の調査と比較すると岡山市内に居住している患者の割合は減少しており,岡山市以外からの患者の割合が増加していた.受診経路は紹介状を持って受診した者が79.9%と割合が増加していた.来院の目的は紹介状を持つ者では歯科治療の実施が最も多く70.4%,紹介状を持たない者では検診・口腔内管理が27.1%であった.治療実施方法は紹介状を持つ者では薬物による管理下での治療が67.3%で,紹介状を持たない者の39.0%よりも有意に多かった.
主障害名で自閉症スペクトラム障害が多いことや,歯科治療の実施を目的とした来院が多かったのは,治療への適応が得られなかったことなどを理由として患者が紹介されたことを反映していると推察された.
岡山市以外からの患者や紹介状を持つ患者の割合が増加したのは,地域の歯科医院との連携により円滑な紹介関係ができ始めていることが要因として挙げられた.
今後も,さらなる地域との連携作りや医療機関・患者へ向けた情報発信を行う必要があると考える.

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© 2015 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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