抄録
MIHARI Project の進展を見据えた安全性監視活動の変化に向けて,医療データベースの有効活用について企業の立場から所見を述べる.本稿では,追加の安全性監視活動として医療データベース研究および使用成績調査を実施するメリットを,医薬品リスク管理計画における安全性検討事項に掲げるリスクの種類ごとに把握し,目的にあった利用方法を考えるとともに,各追加の安全性監視活動を実施する場合に留意すべき事項について考察した.結果,医療データベース研究は,比較的容易に比較対照群を設定できる,例数が多く検出力が高い,過少報告等の問題がない等のメリットに基づく有用性が考えられた.一方,データベースの特性等技術的な留意事項や再審査制度との関係等制度上の課題も考えられた.使用成績調査は,医療データベースでは把握できないデータの収集や特定の条件で実施する特定使用成績調査の場合有用な方法となるが,現在一般的に用いられている使用成績調査のデザインでは難しい場合が多く,より多彩な研究デザインを検討していく必要性が考えられた.いずれの活動にも留意事項はあり,いずれかが他方を補完できるものではない.追加の安全性監視活動を実施する目的を明確に捉え,医薬品使用者のベネフィットを最大化する最も適切な安全性監視活動を我々は選択していかなければならない.