2015 年 76 巻 9 号 p. 2263-2267
症例は90歳,男性.24年前に直腸カルチノイドに対して直腸低位前方切除術施行歴があった.無症状であったが,健診目的の胸部レントゲンで右胸水疑いと指摘されたのをきっかけにCTが施行され,肝S5に腫瘤性病変を認めた.CT上胸部には異常所見を認めなかった.当初は肝内胆管癌を考慮したが,高齢であることを踏まえ肝S5部分切除術を施行した.病理組織学的検査で直腸neuroendocrine tumor (NET)と診断され,24年前に手術施行した直腸カルチノイドの肝転移と判断された.術後7カ月経過現在,無再発生存中である.直腸カルチノイドは一般に低悪性度といわれるが進行が緩徐であることを踏まえ,直腸カルチノイド治療歴のある患者に対しては長期経過後の再発もありうることを念頭に置きつつ診療にあたることが重要と思われる.