日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
自己弁温存基部置換術後に Stanford A 型大動脈解離をきたし上行弓部置換術を施行した Loeys-Dietz 症候群の1例
山名 孝治櫻井 一野中 利通櫻井 寛久種市 哲吉大塚 良平大沢 拓哉
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2015 年 44 巻 5 号 p. 261-265

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抄録
症例は14歳男児.6歳時の心エコーで大動脈弁輪拡大を指摘され,身体所見と併せて遺伝子検索でLoeys-Dietz症候群と診断された.その後の経過観察でバルサルバ洞の急速な拡大と中等度の大動脈弁閉鎖不全を認め,9歳時に手術目的で当院紹介となった.大動脈弁は3尖で器質的変性を認めず,自己弁温存大動脈基部置換術を施行した.術後経過は良好であり,外来で経過観察をしていた.平成26年12月に胸痛とCRP高値にて近医から紹介となり,心エコー,胸部CTでStanford A型急性大動脈解離と診断し緊急手術を行った.前回の人工血管末梢側吻合部のすぐ末梢から弓部大動脈中枢までの巨大なtearを認め,elephant trunkを用いた全弓部置換術を施行した.術後経過は良好であり術後17日目に退院となったが,術後13日目の胸部CTで新たに左鎖骨下動脈の解離,拡大を認めた.大動脈に残存解離腔は存在しなかった.Loeys-Dietz症候群は,大動脈瘤や解離など血管系症状と骨格系所見が特徴的な常染色体優性遺伝の疾患である.Marfan症候群に比べると大動脈径が小さくても解離を発症する危険が高く,大動脈瘤に対しては早期積極的介入が推奨されている.今回自己弁温存基部置換術後5年後にStanford A型大動脈解離を発症し救命し得たLoeys-Dietz症候群の1例を経験した.組織の脆弱性を鑑みるに,厳密な経過観察が必要であると思われる.
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